麦さんぽ

思ったこと、起こったこと、感じたこと、そんなこと。

小説

【読切小説】鳥籠

また一人、将来を見せたかった人が巣立った。溜息を着くと私自身もどこかへ飛び立ってしまいそうで、紅茶と一緒に飲み干した。 部屋には弾きかけのシンセサイザー。それと散らかった衣類に誰のものかも分からない頭髪。私が停滞して何も意味をなさない行為に…

【読切小説】砂糖に注ぐ珈琲

朝起きて、極稀に珈琲を入れる。「淹れる」ではなく「入れる」。どこかしらのお手頃価格のブランドの珈琲、ペットボトルに眠り日夜冷え続けているそれを、一ヶ月に一度もないくらいの程度で、入れる。 最初は砂糖も入れずに飲むのだが、一口と持たない。私は…

【読切小説】オーガニック

喧嘩をした。理由は些細な事だった。なんでそうなったのかも分からないほど、些細な事。それまで溜まった鬱憤が何気ない事で煮え切ったのだ。関係ない引き出しを引っ張り出して投げつけ合う。その間キャッチボールは不可能。デッドボールの押し付け合い。進…